宇宙葬(ロケット打ち上げを見届けに)2024年12月

投稿(文・写真)小島裕子  HP編集 中村一彦

友人から「父は宇宙に興味があり、生前、『宇宙から地球を眺めてみたい』とよく言っていたので遺灰の一部をロケットに載せて打ち上げる宇宙葬をしてあげることにしたの」と聞き、「その時は私も一緒に見届けたいな」と応え、それから約一年。

当初、打ち上げは2024年10月でしたが延期が重なり、「この分だと来年(2025年)になりそうだな」と思っていた矢先の12月10日、宇宙葬の企画会社から「打ち上げが12月20日に決まりました」と連絡が。「えっ、10日後じゃない!」。18日の夜便で発ち25日の朝帰国というスケジュール。急な決定でしたが友人も私も打ち上げを見届けたかったので、友人は会社に休暇願を出し、私はスケジュールを調整しすぐにESTAを申請しました。

 ホテルと航空券の予約は宇宙葬の企画会社が手配し、18日の夕刻に企画会社のスタッフ4名と羽田空港で合流し合計6名でロサンゼルスに飛びました。

 ロサンゼルスまでの飛行は9時間弱。18日の13時40分頃空港着。ここまでは順調でしたが、入国審査の長い列で1時間半待ち、そして企画会社のメンバーのKさんが何故か入国審査でひっかかり別室送りになってしまい、私たち5名は彼女が解放されるまで空港で足止め。別室ではスマホ禁止(ということ)で連絡が取れず、ひたすらKさんが現れるのを待ちました。

アメリカは、特にロサンゼルス空港は入国審査が厳しいらしく、入国審査を待つ間、何人もの人たちが別室送りになる様子を見て驚きました。そして3時間以上が過ぎ、ようやくKさんが姿を見せました。

 ロス空港 Lakersのオブジェ 
空港でジュースとサンドイッチ 計3162円!

空港での時間ロスが影響し、空港から高速バスとタクシーで移動しLompocのホテルに着いたのは午後11時。予定では午後7時には着いていたはずでした。

まぁ、旅にハプニングは付きものですね。

ホテルではドバイで仕事をしている1人の若者とタイで仕事をしている4人の若者が私たちと合流しました。彼らはIT関連、アニメ関連会社の経営者たちで、私の友人同様ロケットに何かを搭載依頼し、今回の打ち上げを見届けに来たということでした。

今回の打ち上げ場所はVandenberg Space Force Base(バンデンバーグ空軍基地)でしたので、私たちは基地から車で15分くらいの街のホテルに滞在しました。そこで2泊の予定が、打ち上げが1日延期となり、3泊することになりました。(ロケット打ち上げにはこのような変更はよくあるそうです)

二日目は、企画会社のスタッフや合流した若者たちと空軍基地のあたりの様子を見に行こうと総勢10名でタクシーに分乗し出かけました。空軍基地の周囲は建物など何もなく、広いブロッコリー畑が私たちを迎えてくれました。確かに空軍基地の周りに建物は建てられませんね。カリフォルニアの空の広さと青さ、そしてさわやかな風を満喫しました。

   ホテルのロビーにロケットのオブジェと
美しいクリスマスツリー

カルフォルニアの青い空
         気持ちよさそう・・・・

     

打ち上げが行われる空軍基地  
基地近くの広大なブロッコリー畑

打ち上げの延期で3日目がフリーになったので、運営会社のKさんがMaveric社(ロケットのエンジン制作会社)のCEOとCOOとのランチを設定してくれ、現地で合流した若者たちも参加。Maveric社のお二人から宇宙事業のことやロケット打ち上げに関することなどあれこれお聞きし、楽しい時間となりました。とてもフレンドリーな方たちで、私たちの幼稚な質問にも分かりやすく答えてくれたことが印象的でした。

Maveric社のCEO、COOと 
 ランチを終えて

ランチの後、友人と私はワイナリーを訪れることに。Lompocの近郊にはたくさんのワイナリーがあるので、ホテルのスタッフお勧めの「Babcock Winery」に、企画会社の男性スタッフ一人を加え3人で出かけました。

ワイナリーではまず4種類のワインをテイスティングし、その後、気に入ったワインを楽しみました。丘の上にある素朴な雰囲気のワイナリーで、さわやかな風を感じながらの素敵な時間でした。

(Lompoc近郊にはワイナリーが沢山)

(Lompoc近郊にはワイナリーが沢山)    (丘の上のBabcock Wineryでテイスティング)

場所からの打ち上げ見学でした。打ち上げ数分前からモニターでロケットの詳細を見ることが出来、その後もリアルタイムでYouTube発信していました。見学場所にはLompocの街の人たちも大勢見学に来ていて、夜空を一瞬昼に変えるようなまばゆい光、そして打ち上げの瞬間「ウォー」「ブラボー」という歓声と拍手に包まれました。夜中で空が曇っていたため宇宙に向かうロケットの形自体は見えませんでしたがロケットのエンジン炎が上昇してゆく様子に興奮しました。「父の遺灰が宇宙に飛んでいく・・」と友人も上昇する炎をジッと見つめていました。炎はどんどん上昇し炎の塊は光の点となり消えていきました。

8分後、上空で分離したロケットの胴体部分が地上に戻ってきます。再利用するためだそうです。炎が徐々に下降してくる様子が見えました。それが着陸した時の音は遠くにいる私たちの耳にも大爆音で、「着陸失敗で爆発した!?」と思ったほどでした。

発射の瞬間 by SpaceX
昼間のような明るさに

            無事上空に。視界から消えるまで眺めていました

人工衛星に搭載された遺灰は一年程地球の周りを周回し、やがて大気圏に突入して燃え尽き流れ星になる・・・、そうです。

今回の打ち上げミッション名は「Bandwagon-2」、ロケットはイーロン・マスク率いるSpace X社のFalcon9。

ロケット打ち上げを初めて眺めながら様々なことを思いました。先ずはこのような経験をさせてくれた友人と亡きお父様に感謝。そしてし、人の弔い方には先祖代々のお墓の中、樹木葬、海洋散骨等様々な形があるけれど、亡くなった人を想い空を見上げ、星に語りかける、逆もまたありで、自分自身も地球に何も痕跡を残さず、ただ星になって大切な人たちを見守る、そんな宇宙葬という形もいいなあと感じました。

その後、タクシーと高速バスを乗り継ぎロサンゼルスに。

その日のランチはSpaceX社に隣接するカフェで、SpaceX社の上層部の方とご一緒しました。その方は日本人で、イーロン・マスクの信頼を得ている直属の部下だと聞いていました。ランチを取りながらSpaceX社について、イーロン・マスクの野望、宇宙産業に関するお話、等々、とても興味深いお話を伺いました。

  Rocket st.
SpaceX社のKさんと)

ちょうどクリスマスシーズンでしたのでクリスマスの雰囲気を楽しもうと、ロサンゼルスの大きなショッピングモール「ザ・グローブ」に行きました。モール全体がひとつの小さな街のようで、街の中心に大きなクリスマスツリーが置かれ店々はクリスマスデコレーションで飾られ、歩くだけでも楽しい時間が過ごせました。モールの中にある有名なメキシコ料理のお店でディナーを楽しみ、長い一日が過ぎてゆきました。

翌日はグリフィス天文台に。アールデコ調の趣ある建物自体も美しく、数々のハリウッド映画のロケ地としても有名です。ここの展望台からはロスの街が一望でき、ハリウッドサインも見ることが出来ます。ロケット打ち上げを見たばかりだったこともあり、宇宙や化学関連の展示をじっくり見学し、更に宇宙に興味が湧き、宇宙をより近くに感じられる場所でした。帰り際に振り返って見た夕暮れの天文台もライトアップされ美しかったです。

ザ・グローヴのメキシコ料理店
グリフィス天文台

ホテルに戻りダイニングで夕食を取った後、ホテルのシャトルバスで空港に。

いつもの私ののんびり旅とは違い、短い期間にあちらこちらを動き回った盛りだくさんの旅でした。(今頃、お父様は宇宙から地球を眺めていらっしゃるんだなぁ)などと思いながら飛行機に乗り込み、帰国の途につきました。

                   ー完ー