投稿 小島裕子 HP編集 中村一彦
2025年10月、スペイン北部に位置するバスク地方の美食の街として有名なサンセバスチャン
(バスク語でドノステア)に4週間住んでいましました。

サンセバスチャンの街 ➡印が私が住んでいたところ。グレーの建物の左側がバル街です。

サンセバスチャンは私の好きな街のひとつで過去に3度訪れましたが、以前はフランス滞在やポルトガル滞在の後に数日間訪れるという形でした。私は「暮らすように旅する」という旅の形が好きで、今回は「美しい海辺の街で美食を味わう」という緩い目的で地元民もどきの生活を送ることにしてみました。
サンセバスチャンまでの行程は、羽田→パリ・シャルルドゴール→ビルバオ(スペイン北部の空港)→サンセバスチャンです。ビルバオ空港からは高速バスで1時間15分程。サンセバスチャンにも空港はありますが小さな空港で、日本から向かうのには利便性に欠けるのでビルバオから入りました。帰途はこの逆のコースです。
サンセバスチャンは隣国フランスまで20㎞の位置にあり、食文化だけでなく風光明媚な景観と歴史的建造物が調和した魅力ある街。ビスケー湾に面したコンチャ海岸という三日月形の美しい砂浜が広がっていて、海を眺めながら海岸沿いの優雅な遊歩道を散策することはこの街の楽しみのひとつと言えます。湾内での船遊びも楽しめます。因みに「コンチャ」はバスク語で「貝」という意味です。
サンセバスチャンは19世紀後半からスペイン王室や貴族のリゾート地として栄えた街で、優雅で洗練された雰囲気が漂っています。今ではヨーロッパの人たちの憧れのリゾート地ということです。
サンセバスチャンの街並み

コンチャ海岸

海岸沿いの散歩道

バスク・ベレー帽の楽団員

今回の滞在先は、ベランダから海が見えバル街に近いという(私には)好条件のマンションでした。歴史ある建物で入口の木のドアはとても大きく重く、エレベーターは昔の映画に出てくるようなレトロなもの。この建物での生活はヨーロッパの香りを感じさせてくれました。外観は古めかしいのですが中はとても天井が高く、モダンで快適な環境でした。
近くにはスーパーマーケット、近郊の農家が新鮮な野菜を販売する野菜市場、肉屋さんに魚屋さん、果物屋さんがあり買い物に便利でした。ただ、個人商店の店員さんたちはほとんど英語を話しませんので、私の拙いスペイン語を駆使してのやり取りでは時に注文と違うものが包まれていたりしましたが、(まっ、いいか。次回、再挑戦だな)。そんなことも愉快な体験でした。
マンション外観

レトロなエレベーター

近所の野菜市場

お肉屋さん

サンセバスチャンと言えば何といっても旧市街のバル街が有名です。中世の趣を残す入り組んだ石畳の路地の両脇には個性的・魅力的なバルやレストランが100軒ほど並んでいます。バル街では先ずバル・ホッピング(バルのはしご)を楽しみましょう。一軒のバルに長居するのではなく、お目当てのバルに行き、地元の発泡白ワイン『チャコリ(txakoli)』を片手にそのバルお勧めのピンチョスを味わう、そして次のバルに。有名なバルは店内に客がひしめき合っていますので注文するタイミングが難しいのですが、カウンターに近づきカウンターの中にいるスタッフと目が合った瞬間、大きな声で「生ビールとこのピンチョスお願いします!」などと伝えます。バルをはしごするうちに注文のタイミングのコツが掴めます。
もちろん、ほとんどのバルにはテーブル席もありますので、特に夜は席に座ってお店の雰囲気に浸りながらゆっくりワインやお料理を楽しむという心地よい時間を過ごすことも出来ます。
サンセバスチャンは治安が良いので(もちろん油断は禁物ですが)夜遅くまでバル巡りが楽しめます。
昼のバル街

夜のバレル街

バルの料理

バレルの看板メニュ-

バルにて

遊びに来た友達と

高級レストランはもちろんですがバルもお料理のレベルがとても高く、どのバルに入ってもハズレがなかったです。また、美味しいお料理だけでなくお店のスタッフの人懐っこさや優しさ、隣り合ったお客さんとのお喋りも居心地の良さや愉しさの要因だと感じました。バルでお喋りをした人たちの中には日本を訪れた人も多く、日本の旅の話題で盛り上がることもありました。
スペインの食文化でひとつだけ慣れないのがディナーの開始時間です。特にレストランは8時半スタートが一般的ですので、ゆっくり食事をしていると終わるのが夜中になることは当たり前。デザートの頃になると眠くなってくることも。
滞在中には近郊の街にも足を延ばしました。
ビルバオに出かけ、グッゲンハイム美術館(この建物は現代建築で最も称賛される作品のひとつだそうです。確かに建物の異形に圧倒され面白さを感じました)を訪れ、作品を見て歩くうちに現代美術というものがますます理解出来なくなり、(うーん、現代美術とは・・?この作品は何を言いたいのかしら・・)。その後ビルバオ大聖堂で静謐な雰囲気に浸り、歴史的建造物が多く小さなお店やバルが軒を連ねる旧市街カスコ・ビエホの散策で中世の時代に思いを馳せました。
グッゲンハイム外観

蜘蛛のオブジェ

ビルバオ旧市街

ビルバオ大聖堂内部

大西洋に注ぐビダソア川を隔てフランスとの国境にある漁師町・オンダリビアはサンセバスチャンからバスで40分ほどのスペインバスクで最も東にある街です。この街は木造のカラフルな家が並ぶ通りや旧市街の周りの古い城壁の跡などで有名で、カラフルな家並みは昔、漁師たちが自分の船にペンキを塗った際、余ったペンキを家に塗ったことが始まりだそうです。少し街を離れるとビダソア川の美しい風景が眺められ、川の向こう岸にフランスが見えます。この街には『世界一美味しい魚介スープ』を提供するレストランがあることでも知られています。確かに味わい深くとても美味でした。ただ、世界一の味の定義は難しい・・・。
オンダリビアはどことなくフランスの雰囲気がある街で、フランス語もあちこちから聞こえてきました。

フランスとの国境のビダソア川

古い城壁

世界一と言われるフィッシュスープ

4週間はあっという間に過ぎました。「生活を楽しみ美食を味わう」目的は十分に果たし大満足の滞在でした。プチ滞在する時はいつも近所の感じの良いカフェの常連になることにしています。今回も家のすぐそばの居心地良いカフェと巡り合い、街歩きなどの前にそこでコーヒーを一杯、が日課のようになりました。カフェのお兄さんがとてもカッコ良かったことは嬉しいおまけ。
サンセバスチャンは美食で人々を魅了する街だと実感しました。昼も夜もバル街に人が集まり、特に明かりが灯る夜は美味しい料理に囲まれた人々の賑やかな会話と笑顔がバルからあふれ、その雰囲気に人生の幸せのひとつの形が感じられました。
旅先では必ず観光案内所を訪れることにしています。今回立ち寄ったサンセバスチャン、ビルバオ、オンダリビアの観光案内所はどこもスタッフの笑顔が暖かく、アドバイスも的確でした。サンセバスチャンの観光案内所では私が長く滞在することを知るとウラ情報のようなことも教えてくれました。ネット検索も便利ですがやはり対面でのやり取りは楽しいものです。
